歯科治療中の全身管理を必要とする患者


 基礎疾患を合併している患者に対して安全な歯科医療を行っていくためには、歯科治療中の全身管理に関する知識と技術がますます要求されている。

 

 歯科治療中の全身管理とは、「バイタルサインを基準値内に維持すること」であり、「逸脱したバイタルサインを基準値内に回復すること」は救急処置である。偶発症を予防するためにも全身管理を行う必要がある。

 

 歯科治療中の全身管理で入口となるのは、フィジカルアセスメント(問診、視診、聴診、触診、打診)である。歯科治療の前に、口調、顔色、活気、呼吸状態、歩行状態を主治医が感じることが最も重要だと考えられる。というのも体調が悪い患者、基礎疾患の急性期に歯科治療を行わない事が偶発症回避の鉄則だからである。

治療の際に必要なモニタリングは、血圧、脈拍数、動脈血酸素飽和度である。心電図は高度なモニタリングであり、症例によって適宜使用とする。

 

 治療中に精神的ストレス、疼痛刺激や局所麻酔薬に含まれる血管収縮剤(アドレナリン等)によって交感神経や副交感神経が刺激されると、バイタルサインは容易に変化する。基礎疾患のある患者は、予備力が低下しているため重篤な偶発症が発症しないよう基準値内にコントロールを図る必要がある。

 

 

【具体例】

・在宅酸素療法中の患者

・日常生活が制限される心血管系疾患のある患者 (4METs未満)

・日常生活が制限される呼吸器疾患のある患者  (4METs未満)

 

※ METs:metabolic equivalents score